シェアードプリントのためのコレクション分析手法

短期集中で読んだので勢いでまとめ。

シェアードプリントを始めるにあたって重要な、でも結構大変なプロセスとして「参加館全体のコレクション分析」というのがある。シェアードプリントは資料の保存責任を分担するもので、「この資料は○○大学」「あの資料は××大学」のように保存責任図書館を決めていくのだけど、参加館の中で「何が」「どのくらい」「重複している/していない」がわからないといけなくて、これを明らかにするためのコレクション分析。
最近の個人の関心事として「日本全体で何冊保存することにしたら、後世まで安全に残せるのだろうか」があって、「資料が失われるリスクと保存にかけられるコストの最適点はどこか」みたいなアプローチも考えつつ、コレクションの重複状況からも色々見えるのではないかと思い。
北米ではSustainable Collection Services(SCS)がこのコレクション分析コンサルタントみたいなことをやっていて、結構使っているシェアードプリントプログラムも多いので、この手法をちょっと見てみようと思った。


参考にしたのは、Maine Shared Collection Strategy(MSCS)*1に対しSCSが提示したコレクション分析提案書

  • クライアント=MSCS、ベンダー=SCS
  • 【】内はその作業の作業者

1.企画ミーティング

  • 【MSCS、SCS】プロジェクトのロードマップとスケジュールを作成
    • 主な参加者:プロジェクトリーダー、システムライブラリアン、コレクション部門の代表者、データをよく知っている人(たいていは目録作成者)など
  • 目的:コレクション分析のために抽出するデータの範囲を決め、タイトルリストを確定。
    • 参加館で異なるデータの持ち方(適用している分類表や貸出規則の違いなども含め)をしている点について要議論。
    • 所蔵データについて比較する集団や特別な保存ルール(州内の著作物は必ず保存するとか)についても決めておく。

2.データの準備

  1. 【MSCS】書誌(bib)データ、資料(item)データ、貸出データを作成、SCSへ提供
  2. 【SCS】受け取ったデータの変換や正規化を行ってデータベース化
    • 正規化の過程で修正したりリッチにしたりした各館の所蔵データについては、あとでリストがもらえるらしい(おまけ的)
  3. 【SCS】集めたデータについてWorldCatから全国的な所蔵冊数を取得。Hathi Trustとの照合もやる
  • SCSがこの作業にかかる期間は、データの量によるけど、240万レコードで3週間くらい

3.グループコレクションサマリー

  • 【SCS】貸出回数○回以上の資料、WorldCatで所蔵が○未満の資料、のように様々な条件でリストを作成

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出典:Maine Shared Collection Strategy (MSCS)Proposal: Collection Analysis Support

4.シナリオ作成

  1. 【MSCS】グループコレクションサマリーをもとに、保存・除却のシナリオ(条件)を作成
  2. 【SCS】そのシナリオを適用した場合、各館が何冊保存・除却することになるか計算
  3. 【MSCS・SCS】これを繰り返す

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出典:Maine Shared Collection Strategy (MSCS)Proposal: Collection Analysis Support

5.候補リスト

  • 【SCS】作成されたシナリオを適用し、グループ全体での保存候補資料リストを作成
  • 【SCS】所蔵館が少ないので「保護」すべきと思われる資料のリストは各館ごとに作成

6.保存責任の割り当て

  • 【MSCS】候補リストをもとに、どの館がどのタイトルを保存するか割り当て*2

7.保存リスト・除却リストの作成

  • 【SCS】保存リストを各館ごとに作成
    • そのグループを代表して保存・保護することを約束するとよいタイトルが掲載されているリスト
  • 【SCS】除却リストを各館ごとに作成
    • 除却できると思われるタイトルが掲載されているリスト

8.データ管理の継続

  • このプロセスで作成したデータセットは2年間有効(ただしデータの更新はしない)。新しいプロジェクトが生まれたときにそのまま活用できる(というSCSの売り)


以上です。
グループコレクションサマリーのようなものは、NC所蔵データを使って試してみられるかも?と思ったけど、学内複本がぼろぼろ落ちそうだな。
あと電子化資料と冊子体資料の突き合わせ。これ課題。

*1:メイン州の図書館によるシェアードプリント。学術図書館だけでなく公共図書館も参加してたり、図書のシェアに主眼が置かれているのが特徴。

*2:割り当て方法についてはこの提案書には記載がないけど、MSCSのWebサイトで公開されてる

2016年度を振り返ってみた

年末に書けなかったので年度の振り返りということにしてみた。

仕事のこと

育児休暇を終え、4月末に職場に復帰。

サービス系の仕事を中心に、なんかいろいろやる人になった。はっきりした担当業務はあんまりなかった。あ、ILL依頼はやってた。
メンテナンスされてないことが多い所だったので、どれもこれも手をつけると大変なタスクだったけど、ぼちぼち片付けた。

自分の部署以外の仕事も入り始めて、ほいほい引き受けてたらちょっと怒られた。優先順位の付け方とか組織的な筋の通し方がなってなかった。このへんは前の部署にいたときから進歩しないな…

冬頃、図書館職員としての在り方を考え直せと言われる事案が勃発して、いちばん大事に思ってたサービスの部分を「あったらいいけどなくても困らない」と言われて、どうしたらいいのかよくわからなくなった。でも、そう言われたってそこは絶対捨てたくないので、そこに磨きをかける決意をした。もっと先生や学生の中に入りこんでいこうと思う。

育児のこと

フルタイムで復帰したので、保育園へのお迎えは18時頃。その時間まで残ってる1歳クラスの子はうちともうひとりだけ。常に罪悪感と母親失格感を抱いていた。
けど当の本人は保育園大好きで、毎日元気に出掛けていく。先生や友達の名前を言って、「○○くんみーんなだいすき」と言っている。熱だしてお休みもあったけど、1歳にしてはたぶんすごく少ないと思う。たぶん本人がとっても頑張ってくれたし、先生たちもとってもよく見てくれていたからだと思う。ベタだけど、「○○くんが元気に保育園行ってくれるから、お母さんもお仕事頑張れるよ、ありがとう」と伝えるようにしてる。あと、公共図書館に行ったときには「お母さんも図書館でお仕事してるよ。ぴっぴっどうぞってやるよ」と仕事の話をするようにしてる。

入園時にはまだ歩き方もおぼつかなかったけど、いまでは走り回り、ジャンプもする。言葉もかなり増えて、普通に文章で会話が成立する。もともと車は好きだったけど、特に重機とか消防車とかのはたらくくるまが好きというふうに好みが出てきた。
怖がりなところがあって、保育園行事ではたいてい泣いてる。

最近の口癖は「うさぎぐみのおにいちゃんだもーん」。この一年の成長っぷりには親も驚き。これからもお互い頑張りましょうね。

趣味のこと

Base Ball Bearのライブに2回行った。ギターの湯浅さんが脱退してしまって、やっぱり今でも胸が痛いし、戻ってきてほしいと心から思っているけど、どっちのライブも鮮やかで格好良かった。これからも見ていたいと思った。

あと最近は米津玄師にもはまっていて、通勤中によく聴いてる。ギターがしっかり鳴ってる曲が多くてなんか意外だった。良い。

サッカーは今年もほとんど見られなかった。代表戦すらほぼ見てないな…テレビをゆっくり見るなんてこといつからしてないだろう……


一年振り返ってみて、なんかほんと毎日ばたばたしてた記憶しかない(保育園に行ってからこども寝かしつけるまで息つく暇ない感じ)けど、こどもは成長しているし、わたしもなんとか年度を終えた。
来年度はいろんなもののバランス感覚を身に付けつつ、フットワーク軽く動いていきたい。あと、人にたくさん会いたい。

次の一年も面白いことにたくさん出会えますように。

シェアードプリント新刊

シェアードプリントに関する新しい本がALAから出ています。
www.alastore.ala.org

手元に届いたのでさっそく中身をぱらぱらと見てみました。

Part I:概論

  • 第1章 シェアードプリントがカバーする領域について
  • 第2章 シェアードプリント構築に必要なガバナンス・ビジネスモデルについて
  • 第3章 確実な保存や利用のために必要と考えられる複本の冊数について

Part II:ケーススタディ

  • 第4章 雑誌のシェアードプリント(CIC SPR)
  • 第5章 政府文書のシェアードプリント(ASERL Collaborative Federal Depository Program)
  • 第6章 図書のシェアードプリント(Maine Shared Collections Strategy)
  • 第7章 大学出版社や外国の出版社の図書、外国のOA出版物のシェアードプリント(Manhattan Research Library Initiative)
  • 第8章 コンソーシアムでの電子書籍DDA(Demand Driven Acquisition:利用者主導型購入)(Colorado Alliance of Research Libraries)
  • 第9章 デジタルコレクションシステムの共有(University of California)

Part III:総括

  • 第10章 将来の方向性(すでに所蔵している資料の共有、かつ、これから所蔵する資料の共有)


すでに海の向こうでは、各館が所蔵している物理的な資料の共有にとどまらず、デジタル資料の共同保存や、新たに購入する資料の共有まで話が進んでいるようす。
シェアードプリントの基本的な考え方から新しいトピックまで幅広く扱われているので、シェアードプリントについてこれから学びたい方にもとてもよいのではないでしょうか。
わたしもがんばって読みます。

2015年を振り返ってみた

今年はまるっと育児休暇。小さな世界で生きていましたが、すごいスピードで成長していく息子を近くでずっと見ていられるという、かけがえのない一年でした。

育児のこと

こどもが生まれての一番の変化は、当たり前ですが、生活の主体が自分ではない他人になったということです。
こどもの食事(授乳)や睡眠のリズムはまだ毎日一定ではないし、こちらの都合でコントロールできるわけではなくて。
やりたいことが自分のタイミングで出来ない。
何をするにも、計画通りにいかない。
こどもができればそんなことは当たり前とわかってはいるのですが、それが結構ストレスでした。
自由に働きに出られたり、飲み会に行けたりする旦那が恨めしくなることもあったなぁ…
ひとりの人間である「わたし」とは違う、こどもに属した「母」としての自分とうまく付き合えないときもたくさんありました。

とか書いてると子育てに苦労しているように聞こえるかもしれませんが、世間一般的には息子は手がかからないほうだろうと思います。
夜泣きもないし、ごはんもそこそこ食べるし、お母さんじゃないとだめー!なこともないし(それはちょっと切ないけど)。
で今度は、もっと大変なおうちはたくさんあるだろうに、わたしはこれでしんどいとか思うようにいかないとか、何を甘いことを言ってるんだ…と自己嫌悪に陥る、と。
ひとりでわざわざ負のスパイラルにはまりこんでいることも多かった。
でも逆にけろっとするのも早かったな。浮き沈みの多い一年でした。
しんどいと思う気持ちは他人と比較するものではないのでしょうね。

あと、体調を整えるのにそれなりに苦労しました。
出産は2時間ほどだったので産後の回復は早かったのですが、それでもダメージは色々あったようです。
とかく頭痛がひどかった。これまでに経験したことないほどひどいのが何度もあってきつかったです。これはいまも悩みの種です。
あと、体重がどんどん減りました。臨月のときの体重から16キロほど落ちています。こんなに短い間にここまで増減することはなかったので、なかなかしんどいです。基礎体力のようなものが削られている気がします…
お母さんは丈夫じゃないといけないですね。周りに迷惑をかけました。

仕事のこと

仕事からは離れていた一年ですが、時々お仕事つながりの人とお会いしていたので、お話を聞いて、刺激をいただいていました。
のんびりお休みしている人間にも色々と気をかけてくださる人たちがいて、本当にありがたいことです。復帰したらエンジン全開で挽回していかねばなりません。

趣味のこと

ライブは11月に解禁されました。Base Ball Bear行きました。夢のような時間だった…楽しかった……。

今年よく聴いていた曲はこのあたり。

サッカーもぼちぼち見ていましたが、好きな選手は怪我のため、ほとんど見られませんでした。来季に期待しています。

来年の抱負

春に職場復帰の予定です(保育園に入れればですが)。
働きながら子育てという新たな挑戦。来年はそれに尽きます。こなせるのかどうか、想像もできません…。
簡単ではないと思いますが、頑張りたいと思います。

この一年、色々ありましたが、家族をはじめとする周りの人に支えられ、そして何よりも息子の笑顔に励まされてきました。
わたしも笑顔を忘れず、自分の周りも明るく照らしながら生きていきたいです。
新しい年もどうぞよろしくお願いいたします。

シェアードプリントの事例

2015アップデート版。

自分の勉強用にぽちぽち記録しているwikiがあるので、その一部を公開します。
http://sharedprint.wiki.fc2.com/

  • ちゃんとした内容は実際の各プログラムのWebサイトを見て確かめてください。
  • リンク切れ、間違いなど多々あるかと思います。ぼちぼち直していきます。
  • wikiの内容は随時変更、更新されます。

ざっとした類型はこんな感じ。

種別

集中型 分散型
CRLJSTOR
CIC SPR
CARLI
FCLD
FLARE
MLAC
OHI PR
PASCAL
ReCAP
TUG
WRLC
ASERL CFDP
BLC
CI-CCI
CIC CLI
CNY
CHLA
COPPUL
Maine SC
MedPrint
MI-SPI
OCA DPR
PDPA
CERES
TRLN
Iowa Wisconsin
WEST

保存対象

図書 雑誌 混在・決まりなし
ALI-PALNI
BLC
CI-CCI
CARLI
GWLA
Hathitrust
MI-SPI
VIVA
CRLJSTOR
CIC SPR
CLOCKSS
LHL
MedPrint
OCA DPR
PDPA
CERES
Scholars Trust
Iowa Wisconsin
WEST
ASERL CFDP
CNY
CHLA
COPPUL
EAST
FCLD
FLARE
LLMC
Maine SC
MLAC
OHI PR
PASCAL
PORTICO
ReCAP
TUG
TRLN
UCL Shared Print
WRLC

所有権

もとの所有者 プログラムに移管 保存図書館に移管 決まりなし
BLC
CI-CCI
CIC SPR
CNY
CHLA
EAST
GWLA
Hathitrust
LLMC
LHL
Maine SC
MedPrint
MI-SPI
MLAC
OHI PR
PORTICO
PASCAL
CERES
ReCAP
Scholars Trust
TUG
TRLN
Iowa Wisconsin
VIVA
WEST
CRLJSTOR
FCLD
UCL Shared Print
WRLC
CARLI
COPPUL
FLARE
OCA DPR
PDPA
ALI-PALNI
ASERL CFDP
CIC CLI
CLOCKSS

シェアードプリントとは何か

大変ざっくりとしたタイトルですが、「シェアードプリント」の定義やなぜシェアードプリントに取り組むのか、その課題、など概念的なことを、以前の記事↓をアップデートする気持ちで書いてみます。spica.hatenablog.jp
(この記事はほんと勉強不足がばれて恥ずかしい...)

なおこの内容は、MLAC(Minnesota Library Access Center)の将来構想レポート第1章「Shared Print Archiving: an environmental scan」によります。直訳ではなく意訳です。
これが絶対唯一のシェアードプリントの定義というわけではないと思いますが、一例として。

※ちなみにMLACはスタッフ用マニュアルも公開していて、これがなかなかコンパクトでわかりやすかったです。いずれ紹介できれば。

シェアードプリントとは何か?

  • 図書館が自身の冊子体書庫を共有し、資料を重複させず、国や地域全体で数冊になるようにして保存する。
  • 各機関が自館のコレクションを独立したコレクションとして重視するのではなく、国の研究を支える共有資源と考えて管理する。
  • シェアードプリントの目的は、責任を共有し、最も費用対効果の高い方法で冊子体を保存すること。言い換えれば、不要な重複を注意深く管理しつつ、国全体のコレクションの幅と深さを維持し保証しようとすることである。
  • 「コレクションは全体の資源として管理されるときその価値が最大になる」、「学術機関の価値は所有している資産ではなく共有している資源で決まる」、と考える。

ちなみに文部科学省による「シェアードプリント」の用語解説は次の通り。

図書館が所蔵する冊子体(紙媒体)の図書や雑誌を、複数の図書館が共同で保存・管理すること。方法としては、各図書館がそれぞれ担当する資料を決め、それを各図書館で責任をもって保存する「分散型」と、各図書館が共同で使える書庫を用意し、対象となる資料をその書庫へ移送して保存する「集中型」がある。
学修環境充実のための学術情報基盤の整備について(審議まとめ)」より

シェアードプリントへの移行を推進する主な要素

  • 経済の下降、高等教育における緊縮財政。もともと図書館は高等教育の中でも協力が進んでいた部門ではあったが、さらなる協力が求められるように。
  • コレクションのために新しいスペースを建設することは将来的にも難しい。分館の閉鎖や、図書のためのスペースを利用者サービスのためのスペースに変えるようプレッシャーが強まることも予想される。
  • 学術研究図書館は、コレクションの価値をプライドや資料の数、予算の大きさで測ることを乗り越え、地域や国全体で「利用できるもの」を重視するように。これはARLのランキングがコレクションの大きさを強調することをやめ、リソース共有の仕組みが発展してきていることによる。
  • コレクションのすべてを保存する余裕のある図書館はほとんどないという認識が高まっている。また、すべてを保存しようとすることは限られた資源(予算)を最適に活用しているとはいえないとも考えられる。協働する方が経済的にメリットがある。
  • 競争から協働へのシフトが、コミュニティ全体のプログラムや戦略を踏まえて各機関のコレクション管理のを行うことへ関心を強めた。コミュニティ全体でのコレクション管理を支援するビジネスモデルも現れ始めている。
  • 信頼できるアーカイブ(例:HathiTrust、Google Books、Portico)の成長が冊子体所蔵を縮小させている。Constance Malpasによれば、2014年までにARL加盟図書館が所蔵する冊子体資料の60%以上がHathiTrustと重複するだろう。
  • 協力、コレクション統合、形式変換が学術資料の所蔵コスト削減につながる。

課題と対応

  • 全国的にストレージ施設はキャパシティの限界に達しているが、新たな冊子体資料の受け入れは続く。
  • ストレージ施設のポリシーを策定する際、不要な重複を防ぐということが盛り込まれていなかった。
  • 書誌レコードと所蔵データの限界により、国全体のストレージの重複状況とキャパシティを査定することが難しい。さらに効果的に所蔵、保存コミットメント、アクセスコミットメント、保存状態を公開する必要がある。
  • 国の成長を支えるようなコレクションを構築するため、国全体で積極的にストレージのコレクションを管理するという経験がほとんどない。図書館は資料の除却と廃棄に関する方針や取り組みの共有に欠けている。
  • ストレージのコレクションを遡及的に管理することは費用がかかりすぎて不可能であり、それは多くの機関で証明されていることではあるが、そうでないところもあるかもしれない。
  • アクセスとアーカイブのミッションの両方に貢献するには葛藤がある。
    • 保存のためにストレージ施設や開架書架を割り当てることによって失われる割合の許容範囲はどのくらいか?
    • 保存とストレージへのコミットメントの順守をどのように監督すればよいか?
    • 持続可能なシェアードプリントプログラムを開発するのに高い経費がかかるのではないか?シンプルに、アクセスのためにはデジタルサロゲートに頼り、ダークアーカイブとして冊子体のバックアップを所蔵すべきではないか?
    • 国で何冊の図書や雑誌の複本を保存するのか?
  • 国全体でのコレクション統合に対する教員の反対は続くだろう。学術コミュニティとともに積極的に支援や教育を行わなければ、シェアードプリントはいわば「焚書」のようなものであろう。
  • 研究者は自身の学問分野のための国家的コレクション構築を概念的には理解できるはずである。しかし学術機関や図書館の管理者は、学術協会とともに、国家的コレクションの魅力を説き、積極的に戦略を立てる必要がある。
  • 著作権保護期間内であるGoogle Booksの著作物へのアクセスに関する法的合意がなされていないため、当面冊子体の配送が必要であろう。
  • 国全体でシェアードプリントを統合するためのインフラはまだ存在せず、このインフラを開発する舵取りを行う機関もまだない。


次は事例もアップデートできれば。

集中型シェアードプリントの将来構想

集中型シェアードプリントの事例について調べる上で、まずは現状存在するその共同書庫がどんな施設なのか、どんな運営をしているのか、といった情報を重点的に見てきたのですが、いくつかの施設では、Webサイトに「将来構想」なるものが置かれていることも気になっていました。
自分はまだその施設がなんなのかを調べている段階で、日本の大学図書館界もまだこれから考えようかっていうところなのに、そうか、海の向こうではもうその次のステップなんだなぁ、と感じた記憶があります。

そうした「将来構想」の事例をちょっとだけメモしておきます。

ReCAP

ReCAP Discovery to Delivery Project

コロンビア大学プリンストン大学・ニューヨーク公共図書館による共同書庫「ReCAP」の将来構想レポート。
ねらいはデポジトリ型からリポジトリ型への移行。
ReCAPではこの書架はコロンビア大学の、あっちの書架はプリンストン大学の、というように書庫スペースの共有にとどまり、その中の資料の重複調整などは行われていないわけですが、そのような「スペースの共有」から「コレクションの共有」に移行しようとしているようです。

レポートの内容は次の通り。

  • 全体像
  • 所蔵分析
  • 協定の改訂案
  • 共同コレクション計画
  • コスト見積もり
  • ほかのシェアードプリントプログラムのビジネスモデル調査
  • 3機関のワークフロー比較
  • 運用の技術面の分析(ソフトウェア*1など)

WRLC

Shared Collection Vision for the Washington Research Libraries Consortium

ワシントンDC近郊の大学による図書館コンソーシアムの将来構想レポート。
こちらもデポジトリ型からリポジトリ型への移行を意識しているようですが、共同書庫にとどまらないコンソーシアム全体による共同コレクションの将来像について、

  • ガバナンス
  • 人的資源
  • 資金モデル
  • 受入とアクセス
  • デジタルプロジェクト
  • 保存

の面から全部で15の提案がなされています。
他のコンソーシアムへの聞き取り調査もあり。

MLAC

Storage Facility or Shared Print Archive?

ミネソタ大学内にあるミネソタ州の図書館のための共同書庫「MLAC(Minnesota Library Access Center)」の将来構想レポート。
書庫がいっぱいになってきたのでどうしようか、というところからスタートしているレポートのようですが、レポートのタイトルから分かる通り、共同コレクションへの移行を意識しています。

レポートの内容は次の通り。

  • ほかのシェアードプリントプログラムの調査
  • MLACの現況
  • 将来構想
    • 案1:現状維持
    • 案2:国のシェアードプリントプログラムのハブになる
    • 案3:州のシェアードプリントプログラムのハブになる
  • 望ましい戦略
    • ビジョン、ミッション、ガバナンス、ポリシーを調整
    • シェアードプリントハブとしての最適分野と規模を見極めるため、必要なデータを収集し分析
    • シェアードプリントハブとなるため収容能力を強化
    • 先を見越したコレクションプロフィール、方針、管理計画を開発
    • 財団、CIC、HathiTrust、CRLなどと協力
    • MLACのミッションに関連する新たなサービスを検討
    • ミッション、ポリシー、ガバナンス、オペレーションの変化を考慮した財政モデルを調査

FCLD

マサチューセッツ州の5大学によるコンソーシアムの共同書庫に関して。
将来構想...とはちょっと違うかもしれませんが、現状の共同書庫がいっぱいになってきたため、また、キャンパス内にある図書館資料の再配置計画のため、新しい共同書庫を建設することが決まったようです。
Library Annex | www.fivecolleges.edu

*1:所蔵管理につかっている図書館システムが3機関ばらばら