冊子体PDAの事例まとめ(1) 1999-2006

読みっぱなしで放置していた、冊子体PDA*1の事例まとめ。
以下の論文を順番に訳したものです。

Patron-Driven Purchase on Demand Programs for Printed Books and Similar Materials: A Chronological Review and Summary of Findings / David C. Tyler, M.A., M.S. Library Philosophy and Practice 2011. URL

1999: バックネル大学

  • PDAの最初の事例
  • すでにこちらに書きました
  • Perdue, J., & Van Fleet, J. (1999). Borrow or buy? cost-effective delivery of monographs. Journal of Interlibrary Loan, Document Delivery & Information Supply, 9(4), 19-28. URL

2001: ヴァージニア大学

  • ILLと結びつけたPDAではなく、利用者からの急ぎのリクエストをどのように処理するかというワークフローの事例報告
  • 国内の資料は5~6日以内、海外の資料は2~3週間で到着
  • 利用者の反応は好意的
  • Clendenning, L. F. (2001, January). Purchase express for any user request. College & Research Libraries News, 62, 16-17.

2002-2003: パデュー大学

  • 初期の冊子体PDAで最も詳しく報告された事例
  • 詳しくはこちら
  • Ward, S. M. (2002). Books on demand: Just-in-time acquisitions. The Acquisitions Librarian, 14(27), 95-107. URL
  • Anderson, K. J., Freeman, R. S., Hérubel, J. V. M., Mykytiuk, L. J., Nixon, J. M., & Ward, S. M. (2002). Buy, don't borrow: Bibliographers' analysis of academic library collection development through interlibrary loan requests. Collection Management, 27(3/4), 1-10. URL
  • Ward, S. M., Wray, T., & Debus-López, K. E. (2003). Collection development based on patron requests: Collaboration between interlibrary loan and acquisitions. Library Collections, Acquisitions, & Technical Services, 27(2), 203-213. URL

2003: ウィラード公共図書館

  • 2000年以降、年間35000ドルをPDAに割り当てた
  • 絶版の本をPDAで買うことも始めた
  • ほとんどのPDA資料の価格は低く(10-15ドル)、到着も早かった
  • Hulsey, R. (June 1, 2003). Purchase on demand: A better customer service model. Library Journal, 128, 77. URL

2003-2004: マクギル大学

  • Schulich Library of Science and Engineeringにおけるプログラム
  • 予算:最初の年は10000カナダドル、次年度は40000カナダドル
  • 結果
    • 1利用者あたりの平均リクエスト冊数は2.9冊
    • リクエストを行った利用者の割合は、全利用者の23%
    • 利用者の80%が3冊以下のリクエスト冊数
    • 工学の教員のほうが科学の教員よりも多くリクエスト(工学のほうが冊子体予算が小さい)
    • 院生によるリクエストが67%
    • 古い資料へのリクエストが大部分
    • 断られたリクエストの12%がすでに所蔵しているものへのリクエスト
    • 往復時間は平均5日
    • このプログラムを通して入手された本は見計らいや通常選書よりも多く借りられる
      • 50%が少なくとも1回は借りられる
      • 17%が5回以上
      • ILLでリクエストされた本は1冊平均2.9回借りられる
    • 1人の利用者が62冊もリクエストするという極端な例も
  • Houle, L. (2003). Convergence between interlibrary loan and acquisitions: Can it be done? Paper presented at the 8th Interlending & Document Supply International (ILDS) Conference, National Library of Australia in Canberra, Australia.
  • Houle, L. (2004). Convergence between interlibrary loan and acquisitions: A science and engineering library experience. Paper presented at the Library Management in Changing Environment: Proceedings of the 25th Annual IATUL Conference, The Library of Cracow University of Technology, Kraków, Poland, 14 (new series) URL

2004: 東ミシガン大学

  • 受入とILLの"融合"は有効であるというレポート
    • スタッフのモラルを向上させ、借受処理の無駄も省く
  • Badics, J. (2004, September). Acquisitions and interlibrary loan together: Good marriage or will George W. Bush object? Against the Grain, 16, 52-54. URL

2004: ノースカロライナ大学ウィルミントン校

  • 試行プログラムの予算は期間の終わりごろに使い果たされた
  • ほとんどのリクエストは教員からであり、次いで院生、その次に学部生
  • 往復とデリバリーの平均時間は13日
  • 1アイテムあたりの平均費用は、人件費を除いて13.49ドル
  • ILLを通してリクエストされ購入された資料はよく借りられる
  • Bombeld, M., & Hanerfeld, A. (2004, April). The surprising truth about faculty perception and use of collection development opportunities: One library's case study. Against the Grain, 16, 18-22. URL

2004: コロラド州立大学

  • 平均時間は7.48日
  • 36.5%の本が最初のリクエスト者によって借りられる
  • 27%以上の本が複数回借りられる
  • Brug, S., & MacWaters, C. (2004, Fall). Patron-driven purchasing from interlibrary loan requests. Colorado Libraries, 30, 36-38.

2004: ウィリアム・アンド・メアリー大学

  • ILLデータ分析に基づく試行プログラム
  • 2004年はプログラムが開始された段階のため、結果の報告や分析はこの段階ではなし
  • Reed, C. A. (2004, September). Expanding the ILL role -- interlibrary loan contributing to collection development. Against the Grain, 16, 44-49. URL

2004: 香港大学

  • ILL貸借リクエストされた資料を海外から借りる代わりに購入する
  • 購入された345タイトルを以下の要素によって分析
    • スピード:海外からの購入は、いくらかの要因のために借受よりも時間がかかった
    • コスト:購入の単位当たりコストは借受のおおよそ2倍
      • 最も早く届く輸送手段を使ったからだと予想される
    • 利用頻度:購入された資料の55%が1回以上使われ(うち26%が2~3回、25%が4~6回、4%が7~10回)、1冊あたり平均2.6回使われる
    • 内容の適否:サブジェクトライブラリアンによって、購入された資料の大部分が蔵書に適していることが示されたの範囲内であることを示した
      • が、購入タイトルの30%以上が博士論文であったり、10%が通常は収集しない外国の言語のタイトルであったりした
      • 18タイトルのみが蔵書に適さない
  • Chan, G. R. Y. C. (2004). Purchase instead of borrow: An international perspective. Journal of Interlibrary Loan, Document Delivery & Information Supply, 14(4), 23-37. URL

2006: インディアナ州立大学

  • 利用者に最も早く効果的に資料を届けるために、ILL借受と購入のどちらが適しているか、2003年終わりごろから試行していた
  • 平均時間は8~9日
  • 1冊あたりの平均コストは各々25ドルと36ドル(最高価格は100ドル)
  • 利用者の反応はよい
  • Comer, A., & Lorenzen, E. (2006). Is purchase on demand a worthy model? Do patrons really know what they want? Charleston Conference Proceedings, 2006, Charleston, South Carolina. 26th 171-179.

2006: 南イリノイ大学カーボンデール校

  • ILL借受の研究によって次のことが明らかになった
    • リクエストされるタイトルは安価
    • 蔵書に加えるのに適している良書
    • 発売中であり容易に入手できること(60%が3年以内に出版されたもの)

PDAを進めるべき

  • Ruppel, M. (2006). Tying collection development's loose ends with interlibrary loan. Collection Building, 25(3), 72-77. URL

2006: ペンシルベニア州立大学

  • ILLリクエスト資料を購入するという試行を行った際、その多くのタイトルがゆくゆくは見計らいで収集される資料であることがわかった
  • ILLと受入部門の処理を調整し、ILLリクエストがあった、見計らいにもふさわしい本についてYankee Book Peddler (YBP)を通して急いで発注して収集することを決定
  • 試行プログラムと合わせて行った3か月の利用者調査の結果はかなり好意的
  • 利用者に乱用されることもなく、通常の収集やILL借受と比較してコストも問題なし
  • Coopey, B. M., & Snowman, A. M. (2006, February). ATG special report -- ILL purchase express. Against the Grain, 18, 46-49. URL

2006: ワショー・カウンティー図書館

  • 利用者によってリクエストされた本を買うことは、ILLで借りることよりも費用対効果が高いかどうかを検証する試行プログラム
  • 試行期間に購入された基準を満たす本は105冊
    • 収集したタイトルの平均コストはILL借受コストの平均よりもわずかに高いだけ
    • 最も購入される本は小説。次に社会科学、健康や病気に関連した科学技術、青少年向けタイトル
    • プログラムの2年目には、1冊あたりの平均コストは54セントとわずかに増加
  • Campbell, S. A. (2006). To buy or to borrow, that is the question. Journal of Interlibrary Loan, DocumentDelivery & Electronic Reserve, 16(3), 35-39. URL


つづく。2010年まであります。

*1:原文ではPOD(Purchase on Demand)と記されています