冊子体資料の保存・除却戦略

ARLの調査報告書、SPEC Kit 337: Print Retention Decision Makingの紹介です。

SPEC Kit 337 Print Retention Decision Making(冊子体保存に関する意思決定)
Scott Britton(Boston College)
John Renaud(University of California, Irvine

2013年10月
Association of Research Libraries

http://publications.arl.org/Print-Retention-Decision-Making-SPEC-Kit-337/

調査期間・回答数

  • ARL加盟館125館に対する調査
  • 調査期間は2013年6月~2013年7月15日
  • 回答数は65館(全加盟館の52%)

調査内容

  • 冊子体資料の保存戦略(キャンパス内閉架書架/遠隔地書庫/共同保存協定)
  • 冊子体資料の除却に関する実務、意思決定

について、

  • どのような業務やプロジェクトを行っているか
  • どのようなステークホルダーが関与しているか
  • 保存する資料・除却する資料の選択プロセスと基準は
  • 内外の関係者とのコミュニケーション戦略
  • こうした試みに対する図書館内外からの反応

をアンケート調査。

冊子体資料の保存に関する取り組み

冊子体資料の再配置や除却
  • 取り組んでいる:61館(94%)
    • キャンパス内の閉架書架に送る:30館
    • 遠隔地書庫に送る:45館
    • 除却する:53館
  • 取り組んでいない:4館(6%)
共同保存協定*1
  • 結んでいる:40館(66%)
    • (それに伴って)除却を行う:33館
  • 結んでいない:21館(34%)

ステークホルダーの関与

  • 意思決定のトップにあたるのはSenior library administratorやLibrary director
    • サブジェクトの担当者やpreservationの担当者とも協働
  • 保存する資料・除却する資料の選択基準の開発はサブジェクトの担当者が中心
  • 教員が関与:23館(38%)
    • 業務が軌道に乗るまでは、教員に資料リストの確認をしてもらう:10館
    • 資料の選択基準の開発について教員に助言をもらう:6館

保存する資料・除却する資料の選択プロセスと基準

選択プロセス
  • キャンパス内の閉架書架に置く資料:資料のグループやコレクションに基づいた選定
  • 遠隔地書庫に置く資料:リストを用いた1タイトルごとの選定
  • 除却する資料:1タイトルごとの選定(リスト上または書架での調査)
タイトルリスト作成の基準
  • 遠隔地書庫に移すもの:出版日付、貸出履歴、フォーマット、状態、分野
  • 除却するもの:冊子体と電子媒体の重複
    • 利用頻度が低いことが除却の基準になることはほとんどない

意思決定における電子コンテンツの重要性

キャンパス内閉架書架へ移動する際
  • 冊子体アーカイブ*2にあるかどうか調査する:5館(18%)/調査しない:22館(82%)
  • 電子媒体が利用できるかどうか調査する:22館(79%)/調査しない:6館(21%)
遠隔地書庫へ移動する際
  • 冊子体アーカイブにあるかどうか調査する:16館(36%)/調査しない:28館(64%)
  • 電子媒体が利用できるかどうか調査する:39館(87%)/調査しない:6館(13%)
除却を検討する際
  • 冊子体アーカイブにあるかどうか調査する:26館(51%)/調査しない:25館(49%)
  • 電子媒体が利用できるかどうか調査する:47館(90%)/調査しない:5館(10%)

意思決定に関するコミュニケーション戦略

  • プレゼンテーション
  • ミーティング
  • Webサイトでの周知 など

意思決定に対する抵抗・反対

  • キャンパス内閉架書架への移動に反対があった:15館(54%)
  • 遠隔地書庫への移動に反対があった:30館(70%)
  • 除却に反対があった:28館(58%)
    • 除却が選択される資料の多くは、冊子体と電子媒体が重複しているもの、破損しているもの、時代遅れになったものだからでは



以上、大部分は無料公開されている要旨の部分をまとめたものです。この巻号は興味があったので購入したのですが、アンケート調査の結果全文やデータが掲載されていてとても興味深いです。よろしければぜひ。

ちなみに、Spec Kitには過去にもいくつかの冊子体資料の保存に関する調査があります。

*1:ある参加館が特定の巻号を保存することに責任を持ち、それによって別の参加館が自分の館で所蔵しているその巻号を除却できるという協定。WESTやASERLのような大規模なものから、2~3の大学によるものまで様々。

*2:ReCAPやWESTなど、集中型・分散型を問わない共同書庫