シェアードプリントとは何か

大変ざっくりとしたタイトルですが、「シェアードプリント」の定義やなぜシェアードプリントに取り組むのか、その課題、など概念的なことを、以前の記事↓をアップデートする気持ちで書いてみます。spica.hatenablog.jp
(この記事はほんと勉強不足がばれて恥ずかしい...)

なおこの内容は、MLAC(Minnesota Library Access Center)の将来構想レポート第1章「Shared Print Archiving: an environmental scan」によります。直訳ではなく意訳です。
これが絶対唯一のシェアードプリントの定義というわけではないと思いますが、一例として。

※ちなみにMLACはスタッフ用マニュアルも公開していて、これがなかなかコンパクトでわかりやすかったです。いずれ紹介できれば。

シェアードプリントとは何か?

  • 図書館が自身の冊子体書庫を共有し、資料を重複させず、国や地域全体で数冊になるようにして保存する。
  • 各機関が自館のコレクションを独立したコレクションとして重視するのではなく、国の研究を支える共有資源と考えて管理する。
  • シェアードプリントの目的は、責任を共有し、最も費用対効果の高い方法で冊子体を保存すること。言い換えれば、不要な重複を注意深く管理しつつ、国全体のコレクションの幅と深さを維持し保証しようとすることである。
  • 「コレクションは全体の資源として管理されるときその価値が最大になる」、「学術機関の価値は所有している資産ではなく共有している資源で決まる」、と考える。

ちなみに文部科学省による「シェアードプリント」の用語解説は次の通り。

図書館が所蔵する冊子体(紙媒体)の図書や雑誌を、複数の図書館が共同で保存・管理すること。方法としては、各図書館がそれぞれ担当する資料を決め、それを各図書館で責任をもって保存する「分散型」と、各図書館が共同で使える書庫を用意し、対象となる資料をその書庫へ移送して保存する「集中型」がある。
学修環境充実のための学術情報基盤の整備について(審議まとめ)」より

シェアードプリントへの移行を推進する主な要素

  • 経済の下降、高等教育における緊縮財政。もともと図書館は高等教育の中でも協力が進んでいた部門ではあったが、さらなる協力が求められるように。
  • コレクションのために新しいスペースを建設することは将来的にも難しい。分館の閉鎖や、図書のためのスペースを利用者サービスのためのスペースに変えるようプレッシャーが強まることも予想される。
  • 学術研究図書館は、コレクションの価値をプライドや資料の数、予算の大きさで測ることを乗り越え、地域や国全体で「利用できるもの」を重視するように。これはARLのランキングがコレクションの大きさを強調することをやめ、リソース共有の仕組みが発展してきていることによる。
  • コレクションのすべてを保存する余裕のある図書館はほとんどないという認識が高まっている。また、すべてを保存しようとすることは限られた資源(予算)を最適に活用しているとはいえないとも考えられる。協働する方が経済的にメリットがある。
  • 競争から協働へのシフトが、コミュニティ全体のプログラムや戦略を踏まえて各機関のコレクション管理のを行うことへ関心を強めた。コミュニティ全体でのコレクション管理を支援するビジネスモデルも現れ始めている。
  • 信頼できるアーカイブ(例:HathiTrust、Google Books、Portico)の成長が冊子体所蔵を縮小させている。Constance Malpasによれば、2014年までにARL加盟図書館が所蔵する冊子体資料の60%以上がHathiTrustと重複するだろう。
  • 協力、コレクション統合、形式変換が学術資料の所蔵コスト削減につながる。

課題と対応

  • 全国的にストレージ施設はキャパシティの限界に達しているが、新たな冊子体資料の受け入れは続く。
  • ストレージ施設のポリシーを策定する際、不要な重複を防ぐということが盛り込まれていなかった。
  • 書誌レコードと所蔵データの限界により、国全体のストレージの重複状況とキャパシティを査定することが難しい。さらに効果的に所蔵、保存コミットメント、アクセスコミットメント、保存状態を公開する必要がある。
  • 国の成長を支えるようなコレクションを構築するため、国全体で積極的にストレージのコレクションを管理するという経験がほとんどない。図書館は資料の除却と廃棄に関する方針や取り組みの共有に欠けている。
  • ストレージのコレクションを遡及的に管理することは費用がかかりすぎて不可能であり、それは多くの機関で証明されていることではあるが、そうでないところもあるかもしれない。
  • アクセスとアーカイブのミッションの両方に貢献するには葛藤がある。
    • 保存のためにストレージ施設や開架書架を割り当てることによって失われる割合の許容範囲はどのくらいか?
    • 保存とストレージへのコミットメントの順守をどのように監督すればよいか?
    • 持続可能なシェアードプリントプログラムを開発するのに高い経費がかかるのではないか?シンプルに、アクセスのためにはデジタルサロゲートに頼り、ダークアーカイブとして冊子体のバックアップを所蔵すべきではないか?
    • 国で何冊の図書や雑誌の複本を保存するのか?
  • 国全体でのコレクション統合に対する教員の反対は続くだろう。学術コミュニティとともに積極的に支援や教育を行わなければ、シェアードプリントはいわば「焚書」のようなものであろう。
  • 研究者は自身の学問分野のための国家的コレクション構築を概念的には理解できるはずである。しかし学術機関や図書館の管理者は、学術協会とともに、国家的コレクションの魅力を説き、積極的に戦略を立てる必要がある。
  • 著作権保護期間内であるGoogle Booksの著作物へのアクセスに関する法的合意がなされていないため、当面冊子体の配送が必要であろう。
  • 国全体でシェアードプリントを統合するためのインフラはまだ存在せず、このインフラを開発する舵取りを行う機関もまだない。


次は事例もアップデートできれば。